<貧困ビジネス>受給敷金を吸い上げ、生活保護費を食い物に 詐欺容疑で逮捕(毎日新聞)

 生活保護受給者が転居した際に自治体から支給される敷金や引っ越し代を、大阪市からだまし取ったとして、大阪府警捜査2課は30日、生活困窮者の支援をうたう自称・NPO(非営利組織)幹部の畑勲容疑者(47)=同市北区池田町=ら3人を詐欺の疑いで逮捕した。畑容疑者らは不動産業者らと組んで、敷金扶助などの保護費を吸い上げる仕組みを構築していたとみられ、府警は保護費を食い物にする「貧困ビジネス」の実態解明を急ぐ。【生野由佳、松井聡】

 他に逮捕されたのは、NPO元メンバーで無職、鍋嶋茂(59)=同市北区豊崎4=と、無職の山本一人(46)=同市東住吉区照ケ丘矢田1=の両容疑者。逮捕容疑は、生活保護を受けて大阪市内で暮らしていた山本容疑者が、家賃の安い神戸市に転居すると偽り、昨年11〜12月、敷金、引っ越し代などを扶助する保護費計約36万円をだまし取った、としている。山本容疑者は認めており、他の2人は否認しているという。

 大阪市は生活保護の住宅扶助の上限(単身世帯月4万2000円)より家賃が高い受給者には、家賃の安い住宅への転居を指導している。府警は、畑容疑者らがこの転居指導を悪用する手口で、他にも保護費を詐取していたとみて追及する。

 大阪市によると、特定非営利活動法人の認証は受けていない。

 ■追跡

 ◇「商売は何でもだまし」

 「受け取った金は、あくまで協力業者からの寸志」。自称NPO幹部の畑容疑者は逮捕前日の29日、大阪市北区の高層マンションに構えた自宅兼事務所で毎日新聞の取材に応じた。生活保護受給者の転居に絡み、不動産業者などの協力業者から保護費を還流させ、毎月40万円程度の収入があるという。畑容疑者はこの仕組みを自ら考案した「畑システム」と自慢し、「行政はだましたが、受給者からピンハネはしていない」と開き直った。

 28階建ての高層マンション6階。ガラス張りの事務所スペースで、革張りのソファに腰をかけた畑容疑者は丁寧な口調で「社会への怒りで昨年秋から始めた活動。相談者からは(金銭は)一切もらわない」と説明した。

 畑容疑者によると、ホームレスなど生活困窮者の相談を受けると、まず生活保護の上限より家賃が高い部屋に入居させ、生活保護を申請させる。行政から低家賃住宅に転居するよう指導があると転居することとし、敷金や引っ越し代の扶助費を行政に水増し請求する。かかわった不動産仲介などの協力業者から、扶助費の一部を還流させていたという。

 「転居先の部屋が敷金・礼金が不要な『ゼロゼロ物件』なら利益も増える。(自分が)受け取るのは1人当たり4万〜10万円。自分も最近まで生活保護受給者で、ぜいたくはしない。たまに立ち飲みに行ければええ。こんなきれいな所に住めてるし」と言う。最後に「いつまでこの活動を続けられるか自信はない。しかし、商売は何でも『だまし』。行政からはどう思われてもええ。大事なのは困窮者の視点」と強調した。

 一方、共に逮捕された鍋嶋容疑者もかつては畑容疑者に相談して生活保護を受けた一人。取材に対し「家賃の高い住宅に入居させられ、掛かった費用は保護費から徴収された。自分は利用されただけ」と畑容疑者を批判した。畑容疑者が名乗っていたNPOの代表を務める60代男性=大阪市都島区=も「(畑容疑者に)NPOの名義を貸したが、活動がえげつないので名前を使わないよう抗議した」と語った。【藤田剛、生野由佳、松井聡】

 ■Newsプラス

 ◆貧困ビジネス

 ◇生活保護費が標的

 生活保護受給者から生活保護費をピンハネしたり、保護費を不正受給して利益を上げる「貧困ビジネス」。数年前から主に大阪市など関西で問題になっていたが、不況下で各地にはびこり社会問題化している。

 ホームレスらに住居を用意し、食費や家賃の名目で保護費を吸い上げる「囲い屋」と呼ばれる手口や、今回の事件のように転居の際に掛かる敷金扶助なども標的にされている。敷金扶助は、賃貸住宅に入居する生活保護受給者に対し、敷金などの費用として支給する生活保護費。全国で最も生活保護受給世帯が多い大阪市の場合、昨年度は約1万3100世帯に支給された。

 貧困ビジネス対策に乗り出した大阪市は、今年2月から敷金扶助の申請の審査を厳格化し、2〜3月で13件の不正を確認した。転居先は敷金・礼金が不要の「ゼロゼロ物件」なのに、支給上限の29万4000円を請求する申請もあった。大阪市は4月から、敷金扶助の上限を家賃7カ月分から4カ月分に引き下げた。

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